場の理論

 人と人が関わるとそこに「場」ができ、磁場と同様、一種のエネルギーが生まれます。ファシリテーターとクライエントが向き合えば2人の場が生まれ、グループでワークショップを行えばそこは複数の人々がつくる場になります。

 「場の理論」は、社会心理学の父と呼ばれるクルト・レヴィン(Kurt Lewin, 1890-1947)が提唱した概念で、基本的には「B=f(P,E)」の公式で表されます。Bは人の行動(Behavior)、Pは個人(Person)、Eは環境(Environment)で、個人の特性とその人が身を置く環境、双方の関数として行動が決定される、つまりある人の行動はその人の人柄や性格プラスその人がどんな場にいるか、その両方の影響を受けて決まるという意味です。ある人が家族と一緒に家でリラックスしていると時と、職場で上司・同僚や顧客と仕事をしている時では顔つきも、身のこなしも、言葉づかいも違うことでしょう。

 

 ここでいう「環境」とは、私たちを取り巻く全てです。今、ここであなたの周りにいる人々や、この部屋の中にある様々な物、この部屋を含む建物全体、この建物の周囲…、大げさにいえば最終的には宇宙全体にいたる全てです。なので、あなたが今、ここで〝どういう人〟として〝どういう行動をとる〟かは、あなたの性格だけによるのではなく、様々な要素が絡み合うこの場の〝空気〟、もっと正確にいうと、あなたがこの場の〝空気〟をどう感じ取るかに影響されて決まるということになります。

 

 社会という大きな場の中に、私たちのワークショップのグループという小さな場があり、その中で向かい合うクライエントとファシリテーターがつくる2人の場があるというのは、「宇宙-星雲-恒星-惑星-衛星」の関係、さらにそれらが織りなす数々の星座と同じような構造に見えます。その中で起きること全ては、縦横無尽に関連し合っていて、そこで起きる全ての出来事は、その関連性の中で起きるわけです。

 クライエントが「今日、上司に叱られました。その原因は私のミスです」と言う場合、この人は「私のミス」が原因、「上司に叱られたこと」が結果と捉えているかもしれません。しかし、上司がたまたまその日は機嫌が悪かったとか、私のミスはパソコンの不調が影響しているなど、実際には様々なことが関連する文脈の流れの中で起きているわけです。なので、どんな出来事でも、ひとつの原因があってひとつの結果が起きると考えるのは、現実にそぐわないということになります。

  • 一つの場が形成されると、そこには磁場のようなエネルギーが生まれる。

  • 場を構成する様々なものは星座のような位置関係を形成し、相互に影響し合う。

  • 場で起きる出来事は、原因-結果を直線的に結ぶ因果律で生じるのではない。

・ 場は均衡を保ちながらも常に変化している。

 

 

場の理論の5つの法則

(Malcolm Parlett, 1991)

 

1.体系化の法則:あらゆる出来事は関連しており、状況全体の関連性の中から〝意味〟が生まれる。

2.今・ここの法則:現在起きている出来事は、今・ここにおける場の構成要素の位置関係上の相互の影響で説明される。

3.一回性の法則:すべての状況は、一回しか起こらない。

4.プロセス変動の法則:プロセスは変遷しており、固定的ではない。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとに水にあらず」(鴨長明)

5.関連性の法則:どんなにありふれたこと、些細なこと、関係なく見えることでも、全てが場のプロセス全体の中で起きているので、今起きていることに関連はないと退けることはできない。